ことのはカフェ

カフェに纏わる由なしごとをそこはかとなく綴ります。

栞さんのボンボニエール 14

ランチタイムの後の休憩時間。きょうはミユキさんが手伝いに来てくれているので、少し、ゆっくりさせてもらおう。深煎りモカを飲みながら、ボンボニエールに手を伸ばす。

 

底の方から、冬限定のチョコレートが。冬に食べたときよりも、やわらかく感じる。気温で食感も変わるものだわ。このチョコレート屋さんは、春のチョコレートもおいしい。みんな、楽しみに待っている。

 

また、買ってこよう。このチョコレートのファンは多い。普段はあまり甘いものを食べないお客さんにも好評だ。猫ちゃんの絵柄のソーサーに添えると皆さん、喜んでくださる。

 

『ミユキさん、冬のチョコと春のチョコと、どっちが好き?』

『両方とも好きなのよ。冬チョコ、まだある?』

『少し、やわらかくなってるけどね』

『それもまた、よしだわ』

『じゃあ、ミユキさんのぶんもとっておくわね』

『ありがとう。春チョコも、そろそろ売ってるわよね? 栞ちゃんのぶんも買ってこようか? 近所に用事があるのよ』

『じゃあ、お言葉に甘えようかしら』

 

やわらかくなった冬チョコを、もう一つ。春チョコを待つ気持ちと一緒に。このチョコレート屋さんはお花をイメージしたチョコレートが人気だ。冬チョコは冬の花、春チョコは春の花。この店とチョコレート屋さんの間の通り道にも、いつもたくさんのお花が咲き誇っている。そのお花を眺めながら、お店に並ぶチョコレートを想像して、足どりが軽くなるのがいつものパターンだ。