ことのはカフェ

カフェに纏わる由なしごとをそこはかとなく綴ります。

ティピカちゃんねる 23

皆様、ごきげんよう。ティピカです。寒さが一段と厳しくなってきました。どうぞ、くれぐれもご自愛くださいませ。降り積もる雪に歓声をあげているのは、雪遊びが大好きな子どもたちだけなのでしょうか。私のようなおじさん猫は寒さが増すような気がするので、どうも心の底から雪を喜んではいない、というのが正直なところではあります。

 

きょうも常連さんのルリコさんと私の相棒ジュンコがお喋りに花を咲かせています。

『街路樹の枝に積もった雪が白いお花みたいに見えてね、思わずシャッターを押したのよ』

ルリコさんは趣味でよくポラロイド写真を撮ります。そして、お気に入りのものをよく私たちにも見せてくれるのです。

『あら、素敵。こぶしの花みたいだわ』

おやおや、ジュンコは気が早いですね。こぶしは春の花ですよ。花言葉は『友情』だと聞いたことがあります。

 

ルリコさんは自分の作品を誰彼構わずに見せるタイプの人ではありません。なので、このように解説つきで自分の撮ったものを見せてくれるのはジュンコに友情を感じているから、ということなのだとお見受けしています。

『もう1枚あるのよ』

そう言って、また写真をジュンコに差し出します。私も拝見しましょう。

 

『吹きだまりのところが猫の形に似てたの。ほら、ここが耳、そして前足。ティピカもよく、こういう格好してるでしょ?』

『ニャー』

確かに、確かに。これは私たち猫が気分転換をするための仕種なのですよ。覗き込む私の頭をそっと撫でて、ルリコさんはカプチーノをひとくち飲みました。ふわふわのミルクが雪のようです。私の苦手なシナモンの匂いは、ルリコさんへの友情で我慢できますよ。

 

グラスを拭きながら、ジュンコが言います。

『ルリコさんの写真を見ていたら、雪遊びの楽しさを思い出した気がするわ』

『子どもの頃って、雪が待ち遠しかったわよね。大人になるとつい、雪の不便なところばかりに目が行きがちだけどね』

いや、まったくそのとおり。私も浮世絵にも見られるような雪見を楽しむ心をすっかり忘れていましたよ。江戸っ子たちなら『雪見酒』と洒落込むところでしょうか。善哉、善哉。

 

私の様子をじっと眺めていたルリコさんがふと、

『ティピカの顔を見ていたら、どうしてかしら? お善哉が食べたくなってしまったわ』

と言いました。ジュンコも

『寒さが隠し味になりそうね。私も小豆煮ようかしら』

などと言っています。小豆、いいですね。私も匂いが大好きなのです。ねだってひとくちぶんわけてもらいましょう。夕食が楽しみですね。小豆は寝て待て、といったところでしょうか。私はちょっとだけ寝ることにしましょう。