ティピカちゃんねる 17
皆様、ごきげんよう。ティピカです。だんだんと秋らしくなってきました。明け方などは寒さを感じることもあります。そんなときはジュンコの『少し』ぽっこりしてきたお腹の上で寝ることにしています。若い頃はぺたんこのお腹だった、と相棒の名誉のために申し添えておきましょう。
カラン、コロンとドアベルが鳴って仲良しの宅配便のお兄さんが入ってきます。手には私の好きな段ボール箱は持っていないので、休憩時間のようですね。
『ジュンコさん、パウンドケーキとコロンビアをください。よう、ティピカ』
『ニャー』ごきげんよう、お兄さん。お仕事、お疲れさまです。お兄さんの隣の椅子へ。お兄さんは『猫のマーク』のついたトラックとユニフォームのために今の会社を受けた、という猫好きなのです。
『さっき、小学生がスケッチしているところに出会ったよ。同じものでも、その子その子でまったく違う表現になるんだから面白いよね』
コロンビアを飲みながら、お兄さんがそんなことを言いました。絵の話になると、ジュンコも私もアサミさんを思い出します。秋の展覧会にジュンコと私をモデルにした絵を出品するのだと言っています。どんな絵になるのか、楽しみです。
『ほんとね。私、子どもの絵って好きだわ。時々ね、うちのティピカを描いてくれる子がいるのよ』
『ティピカは男前だからね』
おやおや。お兄さんこそ、男前ですよ。
ジュンコは子どもさんたちが描いてくれた絵を全部、ファイルに保存しているのです。たくさん集まったら展覧会をしたい、などとも考えているようです。
『さあ、充電できたから、また頑張るか』
お兄さんは、そう言って伸びをしました。私も真似をして伸びをしました。
『お、ティピカ、気が合うな』
『ニャー』お兄さん、安全運転で頑張ってくださいね。
お兄さんの座っていた椅子で、うとうとしていると、外でユキくんの声がします。よっこいしょ、と椅子から下ります。ジュンコがドアを開けてくれました。
『ティピカのおっさん、仕事中なのに、済まないな』
『いや、大丈夫だよ』
『何だか、おっさんと散歩したくてさ』
『ああ、天気もいいし、歩こうか』
道ばたにコスモスが咲いています。ここで並んで座ります。私たちは何も話しません。だけど、私にはユキくんの気持ちがわかっています。ユキくんは『母さん』に『孫』を見せてやりたい、と思っているようです。テレビの仕事から逃げてきたものの、一緒に暮らしていた家族のことは好きでしたから。秋は猫のことも、ちょっとだけしんみりとさせるのですね。
『おっさんはさ、俺が何も言わなくても、わかってくれているんだよな。感謝してるよ』
照れくさいので、私はちょっとだけ寝ることにしましょう。