ことのはカフェ

カフェに纏わる由なしごとをそこはかとなく綴ります。

和と洋のあいだに

住宅街をお散歩していたときのことです。外観は普通のお宅らしいのですが、そこにカフェの立て看板を発見しました。ドアを開けると、カウンターがあります。ご自宅の一部を改装してカフェを営んでいらっしゃるようです。

手渡されたメニューの『お抹茶セット』が気になります。お作法など、心得ていませんがお茶席ではないということもあり、注文してみました。

お作法も何も知らないながら、お茶請けには黒文字が添えられた美しい練りきりを期待していました。

『お待たせしました』

目の前に静かに置かれたトレイの上にはお抹茶よりも、カフェオレが似合いそうな器に入った薄茶が。そして、その隣には北海道の六花亭さんのマドレーヌが包みのままで並んでいました。

抹茶碗、和菓子、楊枝ではないのね…と思いながら、お茶をひとくちいただきます。マドレーヌの包装を開ける音が静かなお店の中ではよく響きます。

マドレーヌもひとくち。あ、美味しい。お抹茶とマドレーヌの意外な組み合わせ。お抹茶には和菓子、という思い込みは改めた方がよいのかもしれません。

お稽古事も型を覚えるところから始めても、徐々に型から離れていくことが極めていくための心構えだといいますものね。

ご自宅の一部を改装したと思われる、このカフェは普段の生活の中で見つけた楽しみをさりげなく、お客さんにも紹介してくれているのでしょうね。


お抹茶とマドレーヌの素敵な関係で思い出したものがひとつあります。
こちらはコーヒー専門店で長年続いているメニューで『お点前コーヒーセット』というものです。どっしりとした抹茶碗に入ったコーヒーにカフェオレ味の羊羹が添えられています。

一見、対照的なようですが、どちらも型にとらわれずに、和と洋のあいだを自由に往来している印象を受けます。和と洋の要素を見事に織り交ぜて独自のものを作る。俄にできることではないと思います。だからこそ、この二つのメニューが心に響いたのだろうと思っています。