ことのはカフェ

カフェに纏わる由なしごとをそこはかとなく綴ります。

お気に入りの椅子を

たくさんの人に知られているもの、そういうものたちは『ほら、アレ』『ああ!アレね』などと、名前を言わなくても伝わる、ということがよくありますよね。

20世紀に活躍したスペインの画家・ダリの溶けたような時計の絵。あのタイトルが『記憶の固執』であると知ったのは、つい最近のことでした。

あの時計はカマンベールチーズのイメージと重なっているそうで、チーズトースト好きには嬉しいお話です。

ダリの作品でもうひとつ強烈に憶えているのが、あの真っ赤なくちびるの形のソファです。芸術作品でありながら、座ることもできるのですよね。


本屋さんを覗いた時にいつも立ち寄る喫茶店があります。チーズトーストがメニューにないのが玉に瑕、なのですが、色々と種類の違う椅子を使っているユニークなお店です。

その中に『盆栽の松』を想像させる布製の緑の背もたれの付いた椅子があって、とても気に入っています。空いているときは必ず、その席に座ります。

以前に西洋画は裸婦を、日本画は石を描くことが一番の練習になる…という話を聞いたことがありますが『くちびるのソファ』と『盆栽の椅子』もその説を後押ししているような気がします。


最近、見かけた日本製の椅子で『きのこ』をモチーフにしたものがあります。全部で5色あるのですが
『盆栽の椅子』と風合いが似ていて、一緒にぽつぽつと並べると森を思わせるような楽しい空間が生まれるのではないかと思います。

家具づくりが盛んな町で、自然の植物をかたどった椅子をたくさん作って、あちこちのカフェで使う。
このような試みがあるとよいな、と思いました。

カフェのお客さんは、皆それぞれにお気に入りの椅子を見つけてお茶の時間を楽しむことができるのではないでしょうか。