ことのはカフェ

カフェに纏わる由なしごとをそこはかとなく綴ります。

特別なエプロンを

トーストのバターはどのように使いますか?

はじめにパン全体に塗ってしまう、バターナイフで削りながら少しずつのせていく、バターをのせてからトーストを焼く…など色々あると思います。

冷蔵庫から出したばかりのバターはなかなか手強くて、たまにはトーストの表面をぼこぼこにしてくれることもあります。


以前、通勤途中に毎朝モーニングセットを食べに寄っていた喫茶店がありました。
早い時間は混んでいないので、ゆっくり本を読みながら1日の仕事の流れを確認していました。

トーストとバターにサラダとコーヒーだけの簡単なセットでしたが、ほぼ毎日通い、おなじものを注文し続けていると、ある違いに気が付きました。

曜日によって、バターが塗りやすいことと塗りにくいことがあったのです。

バターが塗りやすい曜日にはいつも、物静かな女性のスタッフさんがいらっしゃいました。

きっと、トーストを焼く時間やコーヒーを淹れる時間とのタイミングを見計らって、バターを室温に馴染ませておいてくれたのでしょう。

冷蔵庫から出したての気難しいバターとも、やわらかくなりすぎたぐにゃぐにゃのバターとも違って、ほどよい固さでサッとパンの上に拡げることができました。


朝というのは不思議な時間で、トーストのバターを気持ちよく使うことができた、という些細なことでも、何だかその1日がよい1日になるような気がしてしまいました。


ある全国展開のコーヒー店では、特に優秀なスタッフさんには特別に、みんなと違う色のエプロンを身につけてもらっている、という話を聞いたことがあります。

お店は違っていても、その『特別な色のエプロン』は、モーニングセットを楽しませてくださったこのスタッフさんにも、きっと、とても似合うだろうなという気がします。