ことのはカフェ

カフェに纏わる由なしごとをそこはかとなく綴ります。

金色の一片

飲み慣れている筈のいつものブレンドコーヒーが運ばれてきたとき、思わず歓声をあげそうになりました。

カップに美しい『金継ぎ』がほどこされていたからです。よく晴れた南国の空を思わせる色味のカップの縁に小さな金色の一片が。いつもならすぐに飲み始めて猫舌の友人を驚かせるのですが、この時は暫くカップに見入っていました。

漆や金粉を使って食器などを修復する技法がある、と聞いたことはありましたが、現物にふれる機会はずっとありませんでした。

金継ぎの技法は茶の湯の発展とともに始まったという説が一般的なようですが、その元となる技法は縄文時代には既にあったという説も。

先人たちの物に対する心に頭が下がる思いです。

お茶碗が壊れてしまう、という一見すると残念な出来事も、金継ぎの技によって新しい表情をうみだすきっかけに変えることができるのですね。

大量生産のものが増加し、ものをいつくしみ、たいせつに使い続けるという心を忘れてしまいそうになっていました。

壊れたお茶碗を修復しながらたいせつに使うというお店の優しい気持ちも一緒に味わった思いです。

いつものコーヒーが黄金と同じように貴重なものに思えた、と言ってしまっては少し大袈裟かもしれませんね。