ことのはカフェ

カフェに纏わる由なしごとをそこはかとなく綴ります。

此度のお茶請け

カフェでの楽しみは美味しいコーヒーとお茶請け。
お茶請けにはカフェインの刺激から胃をまもる役割があるそうですね。それが拡がって『お茶を引き立てるもの、お茶に合うもの』という意味にも使われるようになっています。その解釈に依るなら、お気に入りの本もお菓子と肩を並べるお茶請けと言えるのではないでしょうか。

いま読んでいるのは精神科医野村総一郎先生の『人生に、上下も勝ち負けもありません』という本です。古代の思想家である老子の言葉を野村先生が現代の私たちにもわかりやすく『意訳』ならぬ『医訳』してくださっています。この本が誕生する背景には、日々のお仕事の中で患者さんたちに老子の言葉をお話ししたところ、その言葉に励まされて症状がよくなった方をたくさん目のあたりにしたというご経験があるそうです。

読み始めるとこんな箇所が。

『この先も、読んでも、読まなくても、どっちでも。』

そう言われてしまいましたが、イラストレーター・くぼあやこさんの味わい深い挿絵も読み続けたい一因になっています。

どっちでもよいのなら、読むことにして、ほんの一部にふれてみましょう。

『善く行くものは轍迹なし』の箇所には擬人化された昆布が登場して、思わずクスリ。どんなお薬よりもこの『クスリ』です。先生の老子のお話が患者さんに効いたというのも納得です。

もう少し、読み進みます。昆布の次はお茶碗が目にとまりました。

『有の以て利を為すは、無の以て用を為せばなり』

この『有と無』の部分の解説にお茶碗が使われています。以前、老子を原文で読もうとして断念したことがありましたが、お茶碗で例えてもらうとわかりやすいです。本文から一部、ご紹介します。


ほんとうに役に立つのは、茶碗の内側の何もない空間。つまり「無」の部分です。その空間にお茶やごはんを入れてこそ、茶碗は本来の役割を果たすのです。


このお話は、コーヒーのおかわりをすすめているわけではないのでしょうけれど…。ちょうどコーヒーカップが空になってしまったので、もう一杯いただこうと思います。